今年の春ごろから昆虫が体に寄ってくるようになった。
祖母の49日の法要で、近所のお寺へ行ってお経を聴いたあとのことである。
脱いだ靴に緑色の光沢を放つカナブンがとまっているのを見つけた。
他に伯父夫婦と、叔父、いとこの一家がいたが、大量発生したわけでなく、自分の靴にだけとまっていたのだった。
手にとって木の幹へとまらせるとそのままじっとしていた。
先週も暑かった。休日に街の中を歩いてきて、建物中へ入って涼んでいると頭に痒みを感じる。二日前に、いつもよりしっかりと白髪染めをしたので、かぶれたのかと思ったのだ。
けれど薬品のせいではなかった。
痒みが広がった首筋に伸ばした指先に小さなでっぱりが触れた。出来物かと思って目の前にかざすと、体調3ミリくらいの丸い虫である。
他にもある。真夏、散歩中に黒いものが飛んできたと思ったら、ぼくの左目へ向かってきた。まさかぶつかるとは思っていなかったから衝撃を受けて驚いた。
黒い体をした昆虫が眼鏡に当たってそのまま後方へ飛び去った。
虫はたくさん寄ってくる。けれど人間には敬遠されるか冷遇されることがある。
その組織や団体、学校などから離れられればそうしたほうがいい。ぼくたちが誰からもなんの言われもない非難もされずいられる場所は、学校だけではないのだ。
別の所属する場所を探すことは、そんなに難しいことではない。けれど、楽しくなるまでに時間はかかる。
より高く、遠くへ飛ぶためには適正な助走が必要だろうからだ。
いっしょに前を見ていてくれる先人を見つけれれればいい。
助走の期間は、それまでの暮らしと並行して新たなことをするから頭も体もえらくなってくるかもしれない。
けれど先人の指導を得て自分で追いこむことならできるのではないか。
つまづいて転んでも、立ちあがるまで見守っていてくれるのだ。
君の助走を手伝いたい。
手伝ってなんの得があるの、と尋ねる人がいるかもしれない。助力者にも、気持ちが通じたときの喜びはあるのだ。
君を支えたいと願うひとは、たくさんいる。
ぼくは十年くらいに一度、知らないところの門を叩いてきた。白髪染めをしている男でも、まだ先輩を頼って生きていこうと思っているのです。
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