嗜好はおかしいかもしれないが

　好きな歌手・演奏者は誰、と問われて答えるのは

尾崎豊とガト・バルビエリ、ジャコ・パストリアスである。

　するとあるとき「みんな故人ではないか」と言われ、

では、では、と改めて答えようとするのだけれど、

ちょっと恥ずかしくなってしまう。

　なぜといえば以前、べつの知人に

「ランニングのときに聴くのはなに」と尋ねられ、

Little Glee Monster、SHISHAMO、魔法のリスニングと伝えたとき、

「若い人が聴くようなのばかりじゃないか」と言われたので

今後はどう答えようと悩んでいる。

　十代のころは、

大人が好きな演歌などをぼくも歳をとったら好きになるのかな、

などと思っていたのだがいっこうに興味がわかない。

　最近読んだものも、多少古いが児童文学で

「トムは真夜中の庭で」「シンデレラの呪われた城」

ちょっとちがうけれど「ビアンカ・オーバースタディ」。

　もちろん現代物も読むのだけれど……あくまでも最近、

読んだというだけのことなのだけれど……。

「いくつだとおもっているんですかあんた」

と言われることもある。

　あ、あの35歳、と思いこんでいましたが

53歳です、というと

「立派なおじさんですよ、まさか

立派じゃないおじさんになりたいって考えているわけじゃ、

ないでしょうね」と目くじらを立てられる。

　好きなものがおかしいのかもしれません。

　でも、決して誰かを傷つけるような嗜好ではないのです。

　ことし一年、どんな年でしたか。

　ぼくはあいかわず、なんにもできないだめな人間でした。

　男らしくなく、かっこよくもなく、

かしこいとこもいいところもなんにもない。

　でも、わかっているのでこれからも

努力をつづけていこうと思います。

　ことし一年ありがとうございました。

　来年、あなたにとっていい年になりますように。に。に。