しんとした日常とにぎやかな日

 ぼくの日常生活は、他の人から見たらとても

味気ないものだろうと思う。

 平日の日中は「おぬしは休みかと思っていた」と

夕方顔を合わせた同僚に言われるほどぼくは存在感がない。

 夜は週に3日、空道とブラジリアン柔術の道場へ行き、

週に一冊、一本は物語を読んだり観たりすると決めている。

 ひとを理解するために英語など外国語の参考書を

読み、CDを聞き、まねする。

 けれど、ひとりで閉じこもっていると

〈こんなことをしていてなんになるのか〉という疑問が兆す。

 好きだからするだけ、というのが答えなのかもしれないけれど、

なんの役に立つの、と聞かれると口ごもってしまう。

 右利きのぼくだが、

二十代後半から箸を持つ手と歯磨きは左と決めてから

翻意していない。

 こんなことがなんのためになるの。


 日曜には10km走るが、

趣味で〈物件ファン〉をしているため

ネットで調べた販売中の中古住宅を走りながらするので

がらっと戸を開けられたり、じぃっとみられたり

図らずも不審者として暗躍してしまう。

 そもそも〈物件ファン〉をはじめたのは、

五歳のときにわかれた実父の行方を知ろうと調べるうち、

彼の弟君がぼくの生家の隣に住んでいるとわかったのが

きっかけである。

 その実父の弟君=叔父をぶしつけにも

なんの約束もなくとつぜん訪ねたのは、

ぼくがまだ二十代のころである。

 二十年以上ぶりに会ったにも関わらず、

嫌な顔をせずに昔話をしてくれたいい思い出があった。

 それから十年して、その叔父が亡くなったことを

ぼくは地方紙の訃報欄で知った。

 さらにその家が売りに出されたということを、

親戚から聞いたのだ。

 なぜかどんどん記憶は薄れるので、その家はどこにあるかと

ランニングしながら見にいったのである。

 亡くなった叔父の家は、何度走りまわっても

なぜか、再訪することができなかった。

 ほんとうに不思議なことだ。ぼくはその家を、あるいはその土地を

買いたいと思っていたのに。


 そんな日常から、ぼくは年に何回かは飛びだす。

 先週末は浜名湖へ大学時代の友人たちがくるというので、

ぼくも合流しておおいに飲んで食べて騒いだ次第である。



 うなぎとステーキが食べ放題。飲み放題。

 遊覧船に乗ってゆりかもめにかっぱえびせんをあげる。

 晴れた……

 帰宅してから、彼らとの絆に乾杯した。


 明日、静岡西の稽古は19時から19時45分まで。

 稽古のあと忘年会をします。

 迷い子が道を教えてもらって、ぶじに家に帰ることができるような

きっかけを。

 どんな物語にも敵役がいるし、

ひとりぼっちだった主人公にも友人ができる。

 孤独なひとの視線の先に、かならず灯火はともる。

 隣の席を空けていれば、かならずだれかが座る。

 あなたにすばらしいことがおきますように。 

(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場

(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場

(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場は静岡駅近くで稽古をしています。 空道は総合格闘技であり、礼節を重んじる武道です。 責任者・門井研は、大学入学から現在まで35年のキャリアがあります。 静岡県空道協会と静岡市空道協会に所属。 空道は、2026年青森県国民スポーツ大会のデモ競技となりました。

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