空道連盟理事長であり、
大道塾塾長の東孝先生が逝去された翌日、
面会に行く。
亡くなったことを全然信じていないまま
東京都豊島区高田の大道塾総本部へ
着くと、黒服をまとった人たちがいる。
何事か、と思うのだが
その何事かに参列するためにきたのだと思い返す。
焼香の列に並ぶ。
事務局長である奥様は、
塾生のひとりひとりを覚えていてくださって、
東先生に
「静岡から門井さんがきてくれましたよ」
などとお声をかけてくださって、
東孝先生に語りかける。
先生は、余命を宣告されてからも、
とてつもない精神力で生きてこられたと
うかがった。
先生の首から下には
赤い痣があって、
闘いのあとが想像された。
焼香を終えて、
全日本、そして世界を制した後輩たちと
献杯する。
「お前らいいか、宴会は日本の文化なんだからな」と、
東孝先生はおっしゃっていたと口々に語る。
ひとしきり、
いつもの空道の宴会で冗談を言い合って
笑いあう。
新幹線で帰る道すがら、
ホームの段差につまづいて
立ち止まる。
とても弱い僕だけれど、
東先生が導いてくれたから
これまで生きてこれたのに。
空道がなかったら、
僕はいなかったのに。
先生。
僕は生きる道を失ってしまう。
そうしていると、
たいまつを掲げて彼方から
歩いてくる人がいる。
その人は無論、東孝先生だ。
その火を天に放つと、
あたりが真っ赤に染まった。
先生。
自分はこれからここで、
精進してまいります。
0コメント