虚空遍歴

 僕はあまり読み達者ではなく、

とくに時代小説については門外漢、と恥じ入っている。

 それでも「泣けるお話——映画や小説や音楽を教えてください」と言われたら、

真っ先にあげるのが、山本周五郎「虚空遍歴」である。

 江戸中に端唄の名手として知られる青年が、

もっと人を感動させる浄瑠璃を作りたいと考えて修行するものの、

失敗に次ぐ失敗をする。

 それを間近でみているひとりの女性が、報告するという体の

物語だったと思う。

 夜中に読んでいて、嗚咽を押し殺していたものの、

当時同居していた弟が目を覚まし

「ばあさんが死んじゃったのかと思った」というほど、

わんわん泣いてしまっていたことを思い出す。

 今日も道場にくる空道家たちは、

みないろいろな希望を、抱いて生活しており

すべてがかなったらいいと思って、

僕も全力で、応援しているつもりである。少なくとも、道場においては。

 日々たくさんの障害があると思う。

 でも、≪純粋でありたい≫という、ある種の狂気をはらみつつ

なにかを続けていけば。


(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場

(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場は静岡駅近くで稽古をしています。 空道は総合格闘技であり、礼節を重んじる武道です。 責任者・門井研は、大学入学から現在まで35年のキャリアがあります。 静岡県空道協会と静岡市空道協会に所属。 空道は、2026年青森県国民スポーツ大会のデモ競技となりました。

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