僕はあまり読み達者ではなく、
とくに時代小説については門外漢、と恥じ入っている。
それでも「泣けるお話——映画や小説や音楽を教えてください」と言われたら、
真っ先にあげるのが、山本周五郎「虚空遍歴」である。
江戸中に端唄の名手として知られる青年が、
もっと人を感動させる浄瑠璃を作りたいと考えて修行するものの、
失敗に次ぐ失敗をする。
それを間近でみているひとりの女性が、報告するという体の
物語だったと思う。
夜中に読んでいて、嗚咽を押し殺していたものの、
当時同居していた弟が目を覚まし
「ばあさんが死んじゃったのかと思った」というほど、
わんわん泣いてしまっていたことを思い出す。
今日も道場にくる空道家たちは、
みないろいろな希望を、抱いて生活しており
すべてがかなったらいいと思って、
僕も全力で、応援しているつもりである。少なくとも、道場においては。
日々たくさんの障害があると思う。
でも、≪純粋でありたい≫という、ある種の狂気をはらみつつ
なにかを続けていけば。
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