先輩たちまで500万光年

 ぼくは高校一年生のとき、

べつべつの高校に進学した中学時代の友人に誘われて、

放課後、フルコンタクト空手の道場「拳法会」に通いだした。

 拳法会は世界に支部がある、浜松市では大きな団体である。

 高校ではすでに柔道部に入っていた。

 だから夕方から午後6時くらいまで投げ技の練習をしてから、

午後7時には空手の道場で稽古をつけてもらっていたことになる。

 帰宅するのは午後9時過ぎで、それから学校の復習や予習をするので、

同級生が話すテレビの話題にはついていけなかった。

 拳法会でもぼくは試合に出た。

 ニュージーランドとの対抗戦に出て、一回戦を日本人選手と対戦して勝ち、

二回戦で、なぜかずっと名前を覚えているのだが

「ジェイソン・モイヤー」選手と当たったのだった。

 対戦直前に、ジェイソン選手がぼくにちかよってきたことを今でも覚えている。

 当時も身長の低かったぼくは、上りたくなるくらい上背のあるジェイソン選手から

「メイビ」と言われて対戦した。

 試合は負けてしまった。

 けれどよかったのは、体格差を克服するには、

パンチや蹴りだけでなく、柔道のような投げも総合的に強くならないといけないと

気づいたことだ。

 そして探しているうちに「大道塾」という格闘技の道場が東京にあることを知って、

無性にいきたくなったのだった。大道塾は、顔面パンチも、蹴りも、投げも認められていた。

 あのとき、拳法会で過ごした三年間、

たくさんの大人が、ぼくに声をかけてくれたし、きにかけてくれたし、

心配してくれたし、味方になってくれた、応援してくれた。

 先輩たちが応援してくれたので、

ぼくは、多少なりともがんばってこれたのです。

 今思えば、眉を剃っていたりパンチパーマだったりした先輩たちは、

当時高校生だったぼくたちに、とてもやさしかった。


 二年前に浜松へ居を移してから、

かつて道場があった場所を、なんども訪ねて走った。

 先輩にもういちど、会いたいと強く願った。

 けれど道場はもうなくなっていて、別の場所へ移っている。

 ネットで検索するとHPは見つかったものの、指導者紹介には

あのすばらしい先輩たちは一人も名を連ねていない。

 先輩。先輩。先輩。いまどうしていますか。

 いま会えたら、ぼくに「けんもおじさんになったなあ。がんばれよ」って

はげましてくれますか。

 ぼくも、先輩たちに、とてもかんしゃしていることをつたえたいのに。

 それなのに。どうしても会えない。

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 今日の稽古は二人で秘密の特訓。

 ともに稽古できる時間が、とても貴重だと思っています。


(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場

(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場は静岡駅近くで稽古をしています。 空道は総合格闘技であり、礼節を重んじる武道です。 責任者・門井研は、大学入学から現在まで35年のキャリアがあります。 静岡県空道協会と静岡市空道協会に所属。 空道は、2026年青森県国民スポーツ大会のデモ競技となりました。

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