リモコン・パパを読む

 リモコン・パパ(岬兄悟著)はショートショート集で、

 その中に「浴室の人魚」がある。

 人魚譚は古来からあり、安部公房の人魚伝も好きだが

岬兄悟のこれはとても面白かった。


 浴室に入った男が、浴槽に人魚が泳いでいるのを見つける。

 人魚は人間に比してとても小さいが、均整の取れた体つきをしており、

彼好みの女性である。

 幻覚かと思って目をこすっていると息子や娘がやってきて

「本当に人魚だ」というので実在しているとわかった。

 かわいいと男は思っていたのだが

妻がやってきて「あら本当に人魚」と驚く。

 きっと目線は怖かったのではないか。

 妻はその晩、用意していた焼き肉料理を先延ばしにして、

急きょ魚料理を作った。

「お風呂は沸かしすぎて熱湯になっちゃったから冷めるまで待ってね」と

妻が言った。


 ここに、読者はおそらく女性の嫉妬心を見るに違いないと思ったのである。

 女性の嫉妬はかわいらしいものだと思う。

 一方で男性の嫉妬は羞恥に堪えないのでなるべくしたくないと思っている。

 嫉妬心は多かれ少なかれもってしまうものだと思うが、

年齢や経験を重ねないとうまくやりすごすことができないのではないか。

 自分と他人を比べるとき、

ぼく自身はとてつもなく劣位にあるとうちひしがれる。

 もちろん他人をうらやむ気持ちはあるのだけれど、

他人のあら探しをしたり、噂話をしたり、中傷したりして一日終えるより、

詩の一行をくちずさんだり、外国語の単語をひとつでも覚えたり、

空道の技、グレイシー柔術のテクニックを

少しでも体になじませることができたりするほうが、

ぼくにとってはいい時間の使い方なのだと考えることにしている。


 他人がさいきんなにしてるどうしてるなどとかぎまわるか、

それとも自分がなにをしているかに意識を向けるか、

どちらが将来の自分にとって、満足がいくだろう。

 たとえすべてが徒労に終わったとしてもである。

 他人がなにをしているかを知りたいのは、

すばらしい行跡や思考などについて、だけである。


 昨夜の稽古は一般部4人、少年部2人で。

 信頼に足る大人になることを、これからぼくも目指していきたい。

 それは学校や会社では教えてくれないことだ。

 少なくともぼくは学校の教師には教えてもらえなかった。

 人生について教えてもらってきたのはずっと、

課外活動で出会った、先生や先輩、後輩を含む親友たちである。


(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場

(社)全日本空道連盟 大道塾静岡西道場は静岡駅近くで稽古をしています。 空道は総合格闘技であり、礼節を重んじる武道です。 責任者・門井研は、大学入学から現在まで35年のキャリアがあります。 静岡県空道協会と静岡市空道協会に所属。 空道は、2026年青森県国民スポーツ大会のデモ競技となりました。

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