白尾悠著「いまは、空しか見えない」を読む。
高校三年生の女子生徒は、
〈地元の国立大学へ行って地元の銀行に勤めることが理想の生き方だ〉と
説く父親から、いつも押しつぶされてきた。
しかし彼女はホラー映画を大好きになってから、
父や母の強い桎梏をひきちぎって、
東京の私立大学の芸術学部へ入学し、
憧れていた映像の世界に飛びこんでいく。
彼女を見込んでくれるひとがいて、
大事なことをし忘れている、立ち向かっていないと看破してくれる。
立ち向かわなければならない相手は父だ。
心筋梗塞で倒れた粗暴な父に電話をすると、またしても暴言を吐かれる。
「こんな化け物みたいな娘、生まれてこなければよかったんだ」
父に逆らえなかった母はそこで初めて静かにだが、はっきりと告げるのだ。
「そのことば撤回してください。生まれてこなければよかったなんて言葉、私が許さない」
彼女は頭の中で、
他の誰のためでもなく、ただ自分自身であるために父を殺める。
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今日は五人で稽古。
空道を通してぼくが気づいてきたことは、
乗り越えなければならないことがぼくにもあるということである。
けれど
厳しくも優しいまなざしをかけてくれる師が、
情けないぼくでも諦めずに期待をかけてくれるひとがいると
想像することで
すこしずつでも積んでいけると思うのだ。
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